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NetApp & FabricPool で実現するストレージ階層化 — コスト削減と性能を両立する設計のポイント

オンプレ# NetApp# FabricPool# ストレージ# ONTAP
インフラチーム
Fortune gate株式会社
2026年6月3日

はじめに

「ストレージ容量が増え続けているのに、コストも際限なく膨らんでいる」——そうした課題を抱えるインフラ担当者は少なくありません。データ量が爆発的に増加する一方で、すべてのデータに高速なフラッシュストレージを割り当てるのはコスト的に現実的ではありません。

この問題に対してNetAppが提供するのが FabricPool です。アクセス頻度に応じてデータを自動的に階層化し、高速ストレージとクラウドの低コストストレージを透過的に統合する機能です。本記事では、NetApp製品の全体像を押さえたうえで、FabricPoolの仕組みと実装のポイントをエンジニア目線で整理します。

1. NetApp とはどんな会社か

NetApp(ネットアップ)は、オンプレミスからマルチクラウドまでをカバーするデータ管理・ストレージソリューションを提供するベンダーです。単なるストレージ装置のメーカーではなく、「データをいかに効率的・安全に扱うか」というプラットフォームを提供している点が特徴です。

その中核となるOSが ONTAP です。NetAppの製品群の多くがこのONTAPを基盤としており、オンプレミスからパブリッククラウドまで一貫した操作性・機能セットを提供します。

2. NetApp の主な製品ラインナップ

オンプレミス — ONTAP ストレージシステム

  • AFF(All Flash FAS):オールフラッシュ構成の高速ストレージ。ミッションクリティカルなアプリケーションや低レイテンシが求められる用途に最適。
  • FAS シリーズ:HDD と SSD を組み合わせたハイブリッド構成。コストと性能のバランスが良く、バックアップや大容量アーカイブにも適する。

クラウド — Cloud Volumes シリーズ

NetApp はパブリッククラウド向けにも複数のサービスを提供しています。それぞれ特性が異なるため、要件に応じた選定が重要です。

サービス

クラウド

特徴

Cloud Volumes ONTAP(CVO)

AWS / Azure / GCP

クラウド VM 上でONTAPを動作させるサービス。オンプレとのレプリケーションや、クラウド間移行が可能。BlueXP で一元管理。

Amazon FSx for NetApp ONTAP

AWS

AWS ネイティブのマネージドサービス。ONTAP 機能(Snapshot / SnapMirror / FlexClone 等)をほぼそのまま利用可能。IOPS・スループット・容量を独立スケール可能。

Azure NetApp Files

Azure

Azure 内でシームレスに利用できる NAS 特化サービス。高性能・低レイテンシでセットアップが簡単。容量ベースの課金。

Google Cloud NetApp Volumes

GCP

モード(Flex / Flex Unified)の選択で NAS からエンタープライズ用途まで対応。容量と性能を独立スケーリング可能。

CVO は VM・ストレージ・アウトバウンド通信のコストがクラウド側にも発生する点に注意が必要です。マネージドサービス(FSx / ANF)と比較する際はトータルコストで評価しましょう。

3. NetApp が選ばれる理由

ハイブリッドクラウド対応

ONTAP ベースの製品はオンプレミスとクラウドをシームレスに統合できます。SnapMirror によるオンプレ→クラウドへのレプリケーション、BlueXP による一元管理など、クラウドシフトの過渡期にある環境でも段階的な移行が可能です。

豊富なデータ管理機能

  • 重複排除・圧縮:容量効率を高め、実効容量を増やす
  • Snapshot:ポイントインタイムの迅速なリストアを実現
  • SnapMirror:オンプレ/クラウド間の非同期レプリケーション
  • FlexClone:スナップショットから即座にクローンを作成(テスト環境などに有効)

高い信頼性と可用性

主要コンポーネントの冗長化、フェイルオーバー、バックアップ機能が充実しており、エンタープライズ環境でのシステム停止リスクを最小化します。

4. FabricPool とは何か

ここからが本記事の核心です。FabricPool は、ONTAP の特徴的な機能の一つで、アクセス頻度(「データの温度」)に応じてデータを自動的に階層化します。

  • ホットデータ(よく使うデータ)→ 高速な SSD(AFF など)に配置
  • コールドデータ(あまり使わないデータ)→ 低コストなオブジェクトストレージ(クラウド等)へ自動移動

アプリケーションからは階層化が透過的に見えるため、移動先がクラウドでも通常と同じようにアクセスできます。これにより、ストレージコストの削減・パフォーマンスの最適化・管理の自動化(手動でのデータ移動が不要) を同時に実現します。

5. FabricPool の仕組みと設計ポイント

基本アーキテクチャ

FabricPool は「パフォーマンス層」と「容量層」の 2 層構成です。

ストレージ

役割

パフォーマンス層

AFF / SSD アグリゲート(NetApp 内蔵 SSD)

ホットデータを高速に処理

容量層

S3 オブジェクトストレージ(AWS S3 / Azure Blob / GCS / StorageGRID)

コールドデータを低コストで保持

FabricPool アーキテクチャ構成図
▲ FabricPool 構成イメージ(パフォーマンス層 / 容量層)

ONTAP が 4KB 単位でブロックごとにアクセス頻度を監視し、コールドと判定されたブロックをポリシーに従って容量層へ移動します。

階層化ポリシー(tiering-policy)

どのデータをいつ移動するかは tiering-policy で制御します。

ポリシー

動作

主な用途

snapshot-only

Snapshot ブロックのみ階層化

バックアップコスト削減

auto

ホット/コールドを自動判定して階層化

汎用。運用データに幅広く適用可能

all

全データを容量層へ移動

アーカイブ専用ボリューム

none

階層化しない

常にホットな業務データ

実装上の 3 つのポイント

① レイテンシ設計

コールドデータの読み込み時はクラウドストレージからフェッチされるため、数十 ms レベルの遅延が発生します。ワークロードの特性を把握し、レイテンシ要件が厳しいデータはホット判定の閾値(cooling-days)を長めに設定して容量層へ落ちにくくすることが重要です。

② キャッシュ挙動

一度コールドと判定されたデータに再アクセスが発生すると、パフォーマンス層に再配置されます。ホット↔コールドの移動が頻繁に繰り返されるとパフォーマンス低下の原因になります。ワークロードパターンを分析したうえで cooling-days を適切に設定しましょう。

③ データ移行とサイジング

FabricPool は「後から階層化」する仕組みのため、データは一旦オンプレ SSD に書き込まれた後にクラウドへ移動します。移行時に全データを一気に投入すると一時的な容量オーバーが発生するリスクがあります。段階移行が基本です。

6. データ移行の実践手順

移行対象の NAS データ 100TB、NetApp SSD 50TB、クラウド容量 50〜70TB 程度を想定した段階移行の例を紹介します。

  1. STEP 1:最初の 30TB だけ NetApp に移行(NAS → NetApp)
  2. STEP 2:FabricPool を有効化(tiering-policy=autocooling-days=2
  3. STEP 3:クラウドへの退避を確認(30TB の一部がクラウドへ移動)
  4. STEP 4:SSD に空き容量があることを確認し、次の 30TB を投入
  5. STEP 2〜4 を繰り返し、全データの移行を完了させる

ポイントは「常に SSD 使用量を抑えて余裕を持たせる」こと。SSD 残量を見ながら分割投入することで容量オーバーを防げます。

移行完了後は tiering-policycooling-days を実運用に適した値へ再設定することを忘れずに。移行時の短い冷却期間のままでは、ホットデータまでクラウドへ退避されてパフォーマンス低下と無駄なクラウドコストが発生します。

7. FabricPool の主な活用シーン

  • Snapshot の自動階層化snapshot-only ポリシーで古い Snapshot を自動的にクラウドへ退避。日次バックアップが蓄積するコストを大幅削減。
  • ログ・アーカイブの退避:過去のログデータや監査ログは参照頻度が低いため、自動的にクラウドへ移動。参照が必要なときは透過的にアクセス可能。
  • 開発・検証環境のデータ:本番データのクローン(FlexClone)を開発環境に提供しつつ、未使用データは階層化してコストを抑える。

まとめ

FabricPool は「高速 SSD とクラウドのコスト効率を両立したい」という現実的な課題に対する、実践的なアンサーです。データの温度に応じた自動階層化により、運用負荷をかけずにストレージコストを最適化できます。

NetApp 製品は単なるストレージ装置にとどまらず、ONTAP による統合管理・SnapMirror などのデータ保護機能・マルチクラウド対応の柔軟性を備えた、データ中心設計のプラットフォームです。クラウド化とデータ量増加が加速する中で、こうした「データをどう効率的に管理するか」という視点はますます重要になります。

FabricPool の導入を検討されている方や、NetApp 環境の最適化についてご相談がある方は、ぜひ Fortune gate までお問い合わせください。

Author
インフラチーム
Fortune gate株式会社

AWS・Azureを中心としたインフラ設計・運用を担当。最新クラウドサービスの検証・導入を積極的に行い、その知見を技術ブログで発信しています。