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クラウド

AWS DevOps Agentの技術仕様と検証まとめ

クラウド# インシデント対応# DevOps# AWS
インフラチーム
Fortune gate株式会社
2026年5月11日

はじめに

AWS re:Invent 2025 でプレビューが発表され、2026年に正式 GA となった AWS DevOps Agent。 インシデント対応・予防を自律的に行う「フロンティアエージェント」として、インフラ運用の在り方を大きく変える可能性を持ったサービスです。

本記事では、公式ドキュメントや実際の検証をもとに、技術仕様と動作確認の結果をまとめます。 SRE・インフラ担当者の方はもちろん、運用コスト削減に関心のある方にも参考になる内容です。

📌 本記事で分かること:AWS DevOps Agent のアーキテクチャ・機能・価格・対応インテグレーション、および弊社環境での簡易検証結果をまとめています。

AWS DevOps Agent の概要

AWS DevOps Agent は、インシデントの「解決」と「予防」を自律的に実行するマネージドエージェントサービスです。 テレメトリ・コード・デプロイデータを横断的に分析し、従来は人が対応していたオンコール業務を 24 時間 365 日自動化します。

主な 3 つの機能

  • 自律的インシデント調査:アラート発生と同時に自動起動。テレメトリ・ログ・デプロイ履歴を関連付けて根本原因を特定します。
  • インシデント予防:過去のインシデントパターンを学習し、オブザーバビリティ・インフラ最適化・デプロイ強化の提案を行います。
  • On-demand SRE Chat:自然言語でインフラを照会。「今のシステムヘルスは?」と聞くだけで状況をレポートします。

⚠️ 注意:本記事の情報は 2026年4月時点のものです。サービスは継続的に更新されるため、最新情報は AWS 公式ドキュメントをご確認ください。

技術仕様

アーキテクチャ

AWS DevOps Agent は デュアルコンソール構成 を採用しています。 管理面(AWS Management Console)と運用面(DevOps Agent Web アプリ)を分離することで、 管理者と現場エンジニアの権限・操作を明確に区分しています。

コンソール

主な利用者

主な操作

AWS Management Console

管理者・SRE リード

Agent Space 作成・管理、インテグレーション設定、IAM / アクセス制御

DevOps Agent Web アプリ

オンコール担当者・開発者

インシデント調査・応答、チャット照会、レポート確認

Agent Space

Agent Space は DevOps Agent の論理的なスコープ境界です。 AWS アカウント設定・サードパーティツール統合・アクセス権限をまとめた「コンテナ」として機能し、 エージェントがアクセス・調査できる範囲を定義します。

動作フロー

  1. リソース学習(トポロジー自動マッピング)
  2. アラート検知(CloudWatch / サードパーティ)
  3. データ相関分析(テレメトリ・コード・デプロイ)
  4. 根本原因特定 & 解決アクション提案

主要機能一覧

機能カテゴリ

機能名

説明

インシデント対応

自動インシデント調査

アラート・サポートチケット発生時に即座に調査開始

インシデント対応

詳細な軽減計画

具体的な解決アクション・成功検証・変更ロールバック手順を提示

インシデント対応

自動インシデント調整

Slack / ServiceNow 経由で関係者へ情報を自動共有

インシデント対応

AWS Support 統合

調査結果から AWS サポートケースを直接作成

予防・学習

Learned Skills

過去の調査パターンからエージェントが自動学習・スキル化

予防・学習

Custom Skills

UI または SKILL.md ファイルで独自の調査手順を定義

レポート・Chat

Artifact 生成

週次ヘルスサマリー・エラーログ・インシデント分析を自然言語で指示して生成

レポート・Chat

On-demand SRE Chat

インフラの状態を自然言語で照会(コンソール操作不要)

イベント連携

EventBridge 統合

イベント駆動ワークフローで DevOps Agent を自動トリガー

インテグレーション

幅広い既存ツールと接続できる点が大きな特徴です。

オブザーバビリティ

Amazon CloudWatch、Datadog、Dynatrace、New Relic、Splunk、Grafana

コードリポジトリ / CI・CD

GitHub、GitHub Actions、GitLab、GitLab Workflows

ITSM / オンコール

PagerDuty、ServiceNow

コミュニケーション

Slack

マルチクラウド / カスタム

Azure リソース、Azure DevOps、MCP サーバー(カスタム)

✅ GA リリースで Azure リソース・Azure DevOps・Grafana・ネイティブ PagerDuty サポートが新たに追加されました。マルチクラウド環境での利用シナリオが大きく広がっています。

価格体系

課金は エージェントがタスクを実行している時間(agent-second) に対して発生します。 タスクの種別によらず単価は統一されています。

タスク種別

単価

インシデント調査

$0.0083 / agent-second

予防分析(Evaluation)

$0.0083 / agent-second

On-demand SRE Chat

$0.0083 / agent-second

特典

内容

無料トライアル

初回実行後 2ヶ月間 無料

AWS サポートプラン割引

サポートプランのティアに応じて 30〜100% のクレジット付与

対応リージョン

プレビュー時点では us-east-1 のみでしたが、GA で 6 リージョンに拡大。 東京リージョン(ap-northeast-1) も含まれており、日本語 UI にも対応しています。

リージョン

リージョンコード

米国東部(バージニア北部)

us-east-1

米国東部(オハイオ)

us-east-2

米国西部(オレゴン)

us-west-2

東京

ap-northeast-1

シドニー

ap-southeast-2

フランクフルト

eu-central-1

アイルランド

eu-west-1

💡 クロスリージョン監視:Agent Space が特定リージョンに存在していても、全 AWS リージョンのリソースを横断監視できます。日本のリソースは東京 Agent Space で完結させることが可能です。

エンタープライズ機能

GA リリースで追加されたエンタープライズ向け機能は以下のとおりです。

機能

内容

CloudFormation IaC

Agent Space のセットアップを Infrastructure as Code で管理可能

外部 IdP 認証

Okta・Microsoft Entra ID によるシングルサインオン対応

VPC エンドポイント / PrivateLink

インターネットを経由しないプライベート接続

カスタマー管理キー

AWS KMS によるデータ暗号化(CMK 対応)

AWS CLI サポート

AWS CLI v2.34.20 以降で devops-agent API コマンドが使用可能

検証結果

弊社の AWS 環境(東京リージョン)で AWS DevOps Agent のセットアップから基本的なインシデント対応フローまでを検証しました。

セットアップ手順

  1. IAM 権限の設定:AWS Management Console で DevOps Agent 用の IAM ロールを作成。sts:TagSession の追加付与が必要な点に注意が必要でした。
  2. Agent Space の作成:東京リージョンで Agent Space を作成。対象 AWS アカウントを紐付け、スコープを定義しました。
  3. CloudWatch インテグレーション:既存の CloudWatch アラームを DevOps Agent に接続。自動でリソーストポロジーのマッピングが開始されました(完了まで約5分)。
  4. GitHub リポジトリの接続:対象サービスのリポジトリを接続し、デプロイ履歴との相関分析を有効化しました。
  5. Slack 通知の設定:インシデント発生時の通知チャンネルを設定。IAM Identity Center のスコープ更新が必要でした。

インシデント対応テスト

テスト環境の Lambda 関数にわざとエラーを発生させ、CloudWatch アラームをトリガーした際の動作を確認しました。

# Lambda のエラーレートを上昇させてアラームをトリガー
aws cloudwatch set-alarm-state \
  --alarm-name "LambdaErrorRate-High" \
  --state-value ALARM \
  --state-reason "Testing DevOps Agent response" \
  --region ap-northeast-1

アラーム発生後の DevOps Agent の動作フロー:

  1. アラーム検知から 約30秒 で調査開始(DevOps Agent Web アプリに通知)
  2. CloudWatch ログ・Lambda 実行履歴・最新のデプロイ差分を自動収集
  3. 関連するコードの変更箇所を特定し、「直近のデプロイで導入された例外ハンドリングの欠落」を根本原因として提示
  4. 修正アクションの提案(プルリクエストへのリンク含む)と Slack チャンネルへの自動通知
  5. 解決後に週次ヘルスレポートへの自動記録と「Learned Skill」への追加
## 根本原因分析

調査対象: lambda/order-processor (ap-northeast-1)
検知時刻: 2026-04-09 14:32:18 JST
エラーレート: 23.4% (閾値: 5%)

## 特定された根本原因
直近のデプロイ (commit: a3f9d12) にて、DynamoDB の
ConditionCheckFailedException の例外ハンドリングが
削除されていることを確認しました。

## 推奨アクション
1. 即時: 前バージョン (v1.4.2) へのロールバック
2. 恒久対応: 例外ハンドリングの再実装(PR #142 を参照)
3. 予防策: 統合テストへの DynamoDB エラーケースの追加

結果サマリー

良かった点

  • アラートから根本原因特定まで約2分で完了
  • 日本語 UI・日本語レポートが自然で読みやすい
  • 東京リージョンで完結するため遅延が少ない
  • CloudWatch・GitHub の接続設定が非常に簡単
  • Learned Skills により繰り返しインシデントの対応速度が向上
  • 既存のオンコールフロー(Slack通知)とスムーズに統合できた

注意が必要な点

  • 初期のリソーストポロジー学習に数分かかる
  • IAM 権限設定でハマりポイントが多い(特に sts:TagSession
  • コスト試算は事前に行うことを推奨(agent-second 課金の把握が必要)
  • プレビューからの移行は IAM ポリシー更新が必須
  • MCP カスタム統合は設定コストが高い

まとめ

AWS DevOps Agent は、インシデント対応の自動化という従来の課題に対して、現実的で使えるソリューションを提供しています。 特に MTTR(平均復旧時間)の短縮効果は顕著で、弊社の検証では 数時間かかっていた原因特定が約2分 に短縮されました。

項目

内容

向いているケース

24/365 のオンコール体制を整えることが難しいチーム、MTTR 短縮が急務の組織

日本語対応

UI・レポートともに自然な日本語で利用可能

マルチクラウド

Azure・GCP リソースの監視も可能。既存ツール資産を活かせる

コスト感

$0.0083/agent-second。2ヶ月の無料トライアルで費用感を把握してから本番導入を推奨

導入難易度

CloudFormation IaC 対応で環境の再現・管理が容易。IAM 設定は慎重に

弊社評価

★★★★☆ — インシデント削減目的での本番導入を前向きに検討

弊社では引き続き検証を重ね、Custom Skills の活用や他インテグレーション(Datadog)との組み合わせについても記事化する予定です。 今後の続編もぜひお楽しみに。

Author
インフラチーム
Fortune gate株式会社

AWS・Azureを中心としたインフラ設計・運用を担当。最新クラウドサービスの検証・導入を積極的に行い、その知見を技術ブログで発信しています。